「ママ大変!
せっかく咲いた桜を雀がちぎって捨ててるのよ!!」
外から帰ってくるなり憤慨した様子の娘
桜吹雪ならぬ
形の良い花そのままが
茎からぽっきりとおられて
落ちているのは
たしかにもったいない
見上げると雀たち
ぷちっ と器用に花をちぎっては
一口噛むと
下に向かってポイ
桜の花の茎のところに
かすかな、本当にかすかな蜜の味がするのを
雀は知っているのでしょう
幼いころ
父がしばらく外国に行くため
祖父の家でほんのひととき暮らしたことがあります
ちょうど小学校入学の時で
田舎の小さな学校に入学した私は
都会からきた珍しい女の子
頭に大きな白いリボンなんかした私は
夏休みまでに転校することが決まっていて
先生もなんだか遠慮してお客様扱い
図工の時間は
「みんなで雅子さんの絵を描きましょう」
なんて・・
仲良しの友達もできず
放課後に連れて帰ってくれる上級生のお姉さんを
校庭でぽつんと待っていたっけ
咲き誇る桜の花をちぎって
そおっと茎を吸ってみた
よく注意しないとわからないほどの
ほのかな甘さ
退屈でさみしかった私は
手を伸ばしては
花をちぎって蜜を吸った
その消えそうなくらいの甘さは
ひとりぼっちのさみしさを
ひととき忘れさせてくれる魔法のクスリだった
都立大の雀は
元気いっぱいに桜をちぎっているけれど
なんだかほんのり切ない甘さが
口の中によみがえってきました